芋焼酎、麦焼酎づくりの蒸留・蒸留機について

2025/05/12（月）

こんにちは。鹿児島のいむた池近くの焼酎蔵、祁答院蒸溜所より、蔵人の東園です。

さて、焼酎造りには「蒸留（じょうりゅう）」という工程があります。今回はこの「蒸留」や「蒸留機」についてご案内したいと思います。

蒸留（じょうりゅう）とは？

モロミに蒸気で熱を加えることでモロミ中のアルコールを気化させ、その湯気を冷やすことで焼酎（液体）を取り出すことです。

また、アルコールが気化する沸点温度は約78.3℃と言われ、最初にでてくる約10分間の焼酎は「初取り」といい、そのままですとアルコール度数は60～70度ほどもあります！
（※ただし、焼酎は45度以下と定義がありますので、販売の際は45°以下に調整します。）

祁答院蒸溜所での蒸留の時間は、全体で2時間30分～3時間を目標に行っています。3時間を超えますとコゲ臭が強くなることから、わたし達の蔵では、モロミ中のアルコールを100％とるのではなく約90％にとどめているのですよ。

ちなみに、初取り焼酎はアルコール度数がかなり高いですが、時間の経過とともに度数は落ちていき、最終的に1回の蒸留を終えますと、おおむね36度ほどになります。

蒸留機の種類

蒸留機の種類は大きく分けて、単式蒸留機と連続式蒸留機の2種類で、祁答院蒸溜所では単式蒸留機を使用しています。また、単式蒸留機の中にも常圧蒸留機と減圧蒸留機があります。

常圧蒸留機

わたし達が生活している通常の気圧の中で、蒸留機内の圧力も変えずに蒸留を行うことで、原料の特性が味わえる酒質になります。芋焼酎で使用されることが多いです。

減圧蒸留機

蒸留機内の圧力を下げることで、沸点が下がり、低い温度で蒸留がなされるので、軽くクリアな酒質になります。麦焼酎、米焼酎、黒糖焼酎等で使用されることが多いです。

単式蒸留焼酎の定義（焼酎乙類）

ここで、さらに単式蒸留焼酎の定義についてご説明しますと、下記のような決まりがあります。
①連続式蒸留機以外の蒸留機でである
②アルコール度数４５度以下である
③使用できない原料→麦芽・果実・砂糖など　

※奄美の黒糖焼酎のみ特例で、黒糖という糖質原料を使用できる

また、単式蒸留焼酎のなかで、焼酎のラベルに「本格焼酎」と表示されているものは、本格焼酎の定義を守ってつくられた焼酎です。本格焼酎の定義は、次の通りです。

本格焼酎の定義

アルコール度数が45度以下である
麹を使用する
単式蒸留機で蒸留したもの
水以外の添加物がない

祁答院蒸溜所の蒸留機

祁答院蒸溜所では、木樽蒸留機とステンレス製蒸留機２台があり、いずれも単式蒸留機になります。

木樽蒸留機　　　　　　　　　　

現在、鹿児島ではお一人と、木樽蒸溜機を作る職人が少ないため、とても貴重な蒸留機です。
杉板を組み合わせたこの蒸留機は、木のスキマから発酵ガスや、アルコール分も少し抜けてしまうため、ステンレス製蒸留よりもやわらかく・まろやかでほのかに木の香りを感じる原酒が取り出せます。
そして、原酒のアルコール度数も、低めなのです（汗）。

芋焼酎「野海棠」や「初取り野海棠」、「野海棠プレミアム」などが、こちらの蒸留機で仕上げた焼酎になります。